「いい格好だな、」
「五月蝿い、見物料とるわよ」
髪もしとどに濡れ鼠。
日本は四季の国だなんていうけれど、何故先人どもは雨季を数えなかったのか。
バケツをひっくり返したような、何の情緒も風情もあったモンじゃない送り梅雨へ窓越しに舌打つ。
…薄曇に無用心にも傘を持たなかった私も悪いのだが。
おまけに大通りでは派手なポルシェに打ち水を食らった。
ご丁寧にファック・サインを掲げてやったあとには、鼠よろしくそそくさと裏路地へ。
小汚いアパートの一室―――世界を股に掛ける大泥棒のアジトと呼ぶには、あまりに相応しくないのでこう形容する―――には、
ソファに寝そべってニヤニヤと視線だけでこちらを見やる、男。
「ひでェ雨だな」
外の惨劇も私の惨状もそ知らぬ様子で、軽やかに紫煙をくゆらせ、呟く。
いったいいつこのアパートへやってきたのだろう。
私が此処を出るときにはいなかったはずの男の存在に一瞬躊躇するも、
張り付く重い布の枷の不快には代えられない。
減るものではないのだ、どうやらルパンたちは帰っている様子もない。
取り立てて問題があるわけでも…ない。
白いシャツを、ボタンもろくすっぽ外さずに無理矢理首から抜く。
細い獣のような目が、一瞬驚きに見開かれる。
しかし次第にゆるゆると、そして抜け目なく、瞼を半分ほど下ろす。
ほとんどシャワーのような雨を浴びた髪を振り、パンツスーツのジッパーを下げる。
足に張り付く裏地に顔をしかめながら、何とか脱ぎ捨てたそれらを適当な椅子の背に掛ける。
「、テメェはいつからストリップ嬢になった?」
「見る客さえいなければ、ストリップとして成立しないただの着替えだけど?」
「そりゃァどだい無理な話だ。男ってのはそういうモンさ」
あらそう、と気のない相槌を片手間にバスタオルを頭から被る。
着替えと称すことこそしたが、クーラーもないボロアパートではTシャツ1枚を着込むことさえ億劫だ。
纏わりついてくる気だるくぬるい湿気を払うように、乱雑に髪を拭う。
「…もうちっと色気のある仕草ってェのが出来ないモンかね?」
耳元から降って湧いたような声。
安物のゴワゴワとしたタオル越しに、何かが体を背後から拘束する。
それがガンマン特有の逞しい腕だと気付くコンマ3秒前に今度は顎をつかまれ―――唇を。
…この早撃ちめ。
重ねられた唇の端から文句でも言ってやろうとすれば、
それすら利用するようにぬるりと煙草に焼かれた鋭い舌先が滑り込む。
このほとんど獣の様相で暴れる舌に仇成す術など私は知らない。
降り注ぐ雨をBGMに、
それを上回る酷くイヤらしい音には目を瞑って。
今はただ、恐ろしく凶暴で甘美なけだものの“食事”に身をまかせる。
ゲリラ豪雨に鼠と獣
(色ッぽい声、出せんじゃねェか)
(…それ以上言ったら、その舌噛み切ってやる)
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次元と雨の午後に。
鼠よろしく啼かされるのも乙でしょう。
…豪雨の夜にブッ飛ばした車に水を浴びせられて浮かんだネタだったり(笑)