揺籠のうたを、
金糸雀がうたう、よ。
水蜜桃のにおいがする。
だらだらと甘ったるいにおいが、生温い夜の風に一層おもくぶら下がる。
軒端に引っ掛けられた風鈴が、申し訳程度に揺れて抵抗していた。
「夏だね」
「夏だな」
真夏の夜だ。
言葉にすれば何処とは無く甘い響きを孕むかもしれないが、
そんなものは素肌を撫でるように纏わりつく空気の前で、少しの足しにもならない。
「暑くて暑くて、寝苦しいったら」
「そうだな」
「うそ。全然汗かかないくせに」
頬に畳の跡がつくのも構わずに、がごろりと身体を横たえている。
絶えずごろごろと移動をしているのは、自分の体温を畳に感じるのが不快なんだろうと
そう勝手に解釈しながら、猫のようだと人知れず笑む。
「人並みに、暑さは感じている。と同じようにな」
「じゃあなんで平気そうなの。うう、あついあつい」
そう言えば、昼過ぎには入道雲が真上にあったな。
夕刻一眠りしている間に、通り雨でも降ったか。
湿気た空気を浴びながら、その不愉快な夜の要因をぼやけた頭で組み立てる。
ちりちりと軽やかな風鈴の抵抗は、蝉の喜遊曲に押され気味のようだ。
「最近ね、眠れないの。あんまり」
「其れは難儀な話だな」
畳に顔をうつ伏せて(鼻が潰れたらどうする気なのだろうか)発する声は、
決して耳障りではないのだが 少しばかり、おもい。
何処か遠くで、赤子のぐずる声がするような。
遠く小さな、助けてという呼び声。
揺籠のうたを、
金糸雀がうたう、よ。
「…子守唄?」
身重の女が口ずさんでいたのを聞いたのかもしれない。
揺り椅子の子供が歌っていたのを聞いたのかもしれない。
もしかすれば、顔も知らぬ母の胎で。
自分の口から出る音は記憶の其れと違って、
酷く不安定に揺れては時折段を踏み違えてまったく煩わしい。
おまけにうる覚えのところどころは、誤魔化すように鼻をならすのだ。
「へたくそ」
「五月蝿い、さっさと寝ろ」
それでもお前が嬉しそうにとろとろと瞳を蕩かせるから
俺は未だに口を閉ざす事を出来ないでいる。
揺籠のゆめに、
黄色い月がかかる、よ。
俺のうたう下手な唄は
金糸雀には勝てない。
(でも おまえのゆめをかるくするくらいなら、なんとか)
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ハイパーに子守唄って萌える気がする。
音感無くても萌え。
写真めじろだけど気にしない!(…)